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NAT

Network Address Translation (NAT)は、ネットワーク内の複数の端末がインターネットを利用する際に、プライベートIPアドレスをパブリックIPアドレスに変換する技術です。主に、プライベートネットワーク(家庭や企業内のネットワーク)とインターネット間のアドレス変換に使われます。

NATの主な目的は、IPアドレスの節約と、ネットワークのセキュリティを高めることです。これを実現するために、内部ネットワークのプライベートIPアドレスを外部(インターネット)とのやりとりのためにパブリックIPアドレスに変換します。


NATの動作

  1. 内部ネットワークに複数のデバイス(例:家庭内のPC、スマートフォン)があるとします。

  2. これらのデバイスは、プライベートIPアドレス(例えば、192.168.x.x)を持っています。

  3. これらのデバイスがインターネットにアクセスしようとすると、ルーターゲートウェイがNATを使ってその通信を外部のサーバーに送信します。

    • ルーターが、プライベートIPアドレスを自分のパブリックIPアドレスに変換し、送信します。
    • インターネット上のサーバーは、このパブリックIPアドレスを受け取り、そのまま応答を返します。
    • 応答がルーターに届くと、ルーターはその応答を元の内部IPアドレスに転送します。

NATの種類

  1. Static NAT(静的NAT)

    • 1対1の変換です。
    • 特定のプライベートIPアドレスに対して、常に同じパブリックIPアドレスを割り当てます。
    • サーバーなどがインターネットからアクセスされる必要がある場合に使います。
    • 例:内部サーバー(192.168.1.2)を外部からアクセスできるようにするために、203.0.113.10というパブリックIPアドレスを静的に割り当てます。
  2. Dynamic NAT(動的NAT)

    • プライベートIPアドレスの範囲と、使用可能なパブリックIPアドレスの範囲をマッピングします。
    • 使用するパブリックIPアドレスは動的に割り当てられます。
    • 静的NATと違い、アドレスが必ずしも同じではありません。
  3. Port Address Translation (PAT)(ポートアドレス変換)

    • これは一般的に「NAPT (Network Address Port Translation)」とも呼ばれます。
    • 複数の内部デバイス1つのパブリックIPアドレスを共有する方法です。
    • 異なるポート番号を使って、1つのパブリックIPアドレスに複数の通信をマッピングします。
    • ほとんどの家庭や企業ネットワークで使用されており、一般的な家庭用ルーターがこの方式を利用します。

    : 3台のPC(192.168.1.2, 192.168.1.3, 192.168.1.4)があり、それらが1つのパブリックIPアドレス(203.0.113.10)を共有してインターネットに接続する場合、各PCに異なるポート番号が割り当てられます。

    • 192.168.1.2がポート1000でインターネットに接続
    • 192.168.1.3がポート1001でインターネットに接続
    • 192.168.1.4がポート1002でインターネットに接続

    これによって、インターネット上のサーバーは1つのIPアドレスを使って接続先を識別し、ポート番号を使って元のPCを区別できます。


NATの利点

  1. IPアドレスの節約

    • 1つのパブリックIPアドレスで、複数の内部デバイスをインターネットに接続できるため、IPアドレスの無駄を減らすことができます。
  2. セキュリティの向上

    • 内部ネットワークのプライベートIPアドレスは外部に公開されません。これにより、外部からの不正アクセスのリスクが減少します。
    • 外部から直接アクセスできるのは、NATによって公開されたパブリックIPアドレスだけです。
  3. プライバシーの保護

    • 内部ネットワークのIPアドレスが外部に見えないため、ユーザーのプライバシーが保護されます。

NATの問題点

  1. 接続の制限

    • NATによって、外部から内部ネットワークへの接続が制限されます。たとえば、内部のサーバーに外部からアクセスしたい場合、ポートフォワーディングや静的NATが必要になります。
  2. パフォーマンスの低下

    • 大量のパケット変換が行われるため、ネットワークパフォーマンスに影響を与える場合があります。
  3. 一部のアプリケーションやプロトコルの動作不良

    • NATを通すことで、一部のアプリケーション(特にP2P通信やVoIPなど)が正常に動作しないことがあります。これには、NATトラバーサル技術(STUNやUPnPなど)を利用する必要があります。

まとめ

  • NAT (Network Address Translation) は、内部ネットワークのプライベートIPアドレスをパブリックIPアドレスに変換して、IPアドレスの節約セキュリティ向上を目的とした技術です。
  • Static NATDynamic NATPATの3つの主要なタイプがあり、家庭や企業ネットワークでは主に**PAT(ポートアドレス変換)**が利用されます。
  • NATはセキュリティ向上に役立つ一方で、接続の制限やパフォーマンスへの影響があるため、運用には工夫が必要です。

NATを活用することで、インターネット接続に必要なパブリックIPアドレスを効率的に使うことができ、同時にセキュリティを高めることができます。