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例_要求定義・要件定義

「建設機械のリアルタイムシミュレーション」に関する要求定義・要件定義を整理します。

シミュレーションの目的や用途によって細かい要件は変わるでしょうが、建設機械シミュレーションを前提に、要件定義の流れに沿って考えてみます。





1. 要求定義(Requirements Definition)

要求定義では、システムの目的やステークホルダーのニーズを明確にします。

(1) シミュレーションの目的

  • 建設機械(例:油圧ショベル、ブルドーザー、クレーン)の動作をリアルタイムで再現する
  • シミュレーションを通じて、開発・設計・トレーニング・自動化アルゴリズムの検証を行う
  • 現場での運用テストやコスト削減のためのシミュレーション環境を構築する

(2) ステークホルダーと要求

ステークホルダー要求
開発チーム建設機械の挙動を正確にシミュレーションできること
設計者メカニクスや物理特性を検証できること
AI/自動運転研究者機械学習による制御アルゴリズムを試せること
現場オペレーター操作トレーニングができること
経営層・マネージャー開発コストの削減につながること

(3) 想定されるユースケース

  1. 建設機械の設計・試作段階での動作検証
    • CADデータをもとにシミュレーションし、関節可動域や負荷を評価
  2. 運転トレーニング用のVR/シミュレーター
    • 実際の建機を操作する前に、バーチャル環境で訓練
  3. AIによる自動運転アルゴリズムの開発・検証
    • LiDARやカメラを用いた環境認識と制御アルゴリズムのテスト
  4. 建設現場の施工シミュレーション
    • 建設プロジェクトの工程管理や効率最適化のための仮想環境構築




2. 要件定義(Requirements Specification)

要求をもとに、具体的なシステム要件を定義します。

(1) 機能要件(Functional Requirements)

物理シミュレーション

  • 剛体・柔軟体シミュレーション(クローラー、油圧シリンダーの挙動)
  • 土砂・岩石の掘削・積載シミュレーション(粒子法、DEMなど)
  • リアルな摩擦・衝突計算

リアルタイムレンダリング

  • 建機のアニメーション・スキンメッシュ対応
  • 環境のグラフィック(地形、障害物)
  • ライティング、影、マテリアル表現

環境認識シミュレーション

  • LiDAR、ステレオカメラ、IMUなどのセンサーシミュレーション
  • 実機データと連携しやすいデータ出力

ユーザーインターフェース

  • 操作用のGUI(トレーニングモード、データ解析モード)
  • 入力デバイス(ジョイスティック、VRコントローラー)対応

AI・制御アルゴリズムのテスト機能

  • Python API / ROS 2 対応(AI制御の実験)
  • 強化学習用のシミュレーション環境




(2) 非機能要件(Non-Functional Requirements)

リアルタイム性

  • 物理計算・レンダリングをリアルタイムで処理(目標:30~60FPS)
  • 並列計算(マルチスレッド / GPU活用)で負荷分散

拡張性

  • 追加の建機モデルやカスタム機能を簡単に追加できる設計
  • 物理エンジン(PhysX, Havok, Bullet)との統合が可能

互換性・データ入出力

  • Unity / Unreal Engine のプラグイン形式で提供
  • BIM/CIMデータやCADデータ(STEP, IGES)と連携
  • シミュレーションデータをCSV/JSONで出力

安定性・精度

  • 物理演算の安定性(チラつきや異常動作を防ぐ)
  • 精度の調整機能(高速計算モード vs 高精度モード)

運用・デバッグ性

  • ログ機能(シミュレーションの動作履歴記録)
  • 可視化ツール(グラフ、デバッグウィンドウ)




(3) システム構成(アーキテクチャ)

ソフトウェア構成

コンポーネント技術候補
物理シミュレーションPhysX, Havok, Bullet, MuJoCo
レンダリングUnity, Unreal Engine
環境認識ROS 2, OpenCV, LiDAR SDK
データ入出力JSON, CSV, ROSbag
制御システムPID制御, 強化学習(RLlib, TensorFlow, PyTorch)

ハードウェア要件

  • GPU: RTX 3060 以上推奨(リアルタイムレンダリング)
  • CPU: 8コア以上(物理シミュレーション向け)
  • RAM: 16GB 以上(大規模シミュレーション用)




3. まとめ

  • 要求定義では、ステークホルダーのニーズやシミュレーションの目的を整理
  • 要件定義では、具体的な機能・非機能要件を明確化
  • システム構成として、物理エンジンやレンダリング技術、ハードウェア要件を設定

この内容をさらに詳細化し、UMLやユースケース図と組み合わせると、より整理しやすくなります。