エアコンの仕組み
エアコンの冷房と暖房の仕組みは、冷媒の状態を変化させて熱を移動させるヒートポンプ技術に基づいています。どちらもコンプレッサー・コンデンサー・膨張弁(またはキャピラリーチューブ)・エバポレーターを使用しますが、冷媒の流れが逆になることで冷房と暖房の役割が変わります。
また、**4方弁(リバーシングバルブ)**という装置が、冷暖房の切り替えを担っています。
冷房の仕組み
使用する機械
- コンプレッサー(圧縮機)(室外機)
- 冷媒を高温・高圧の気体に圧縮する。
- コンデンサー(凝縮器)(室外機)
- 高温・高圧の冷媒が外気に熱を放出し、液体になる。
- 膨張弁(またはキャピラリーチューブ)
- 冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の液体にする。
- エバポレーター(蒸発器)(室内機)
- 冷媒が室内の熱を吸収して気化し、部屋の空気を冷やす。
- 送風ファン(室内機・室外機)
- 室内機は冷えた空気を部屋に送る。
- 室外機は放熱を助ける。
冷房の流れ
- エバポレーター(室内機):低温・低圧の液体冷媒が室内の熱を吸収し、気化する。
- コンプレッサー(室外機):気化した冷媒を圧縮し、高温・高圧の気体にする。
- コンデンサー(室外機):高温・高圧の冷媒が外気に熱を放出し 、液体になる。
- 膨張弁(またはキャピラリーチューブ):液体冷媒の圧力を下げ、再び低温・低圧の状態にする。
- エバポレーターに戻る → このサイクルを繰り返す
→ 室内の熱を外に逃がし、冷たい空気を送り出すのが冷房の仕組み
暖房の仕組み
使用する機械(冷房と同じだが、冷媒の流れが逆)
- 4方弁(リバーシングバルブ)(室外機)
- 冷媒の流れを逆転させ、暖房運転に切り替える。
- コンプレッサー(圧縮機)(室外機)
- 冷媒を高温・高圧の気体に圧縮する。
- エバポレーター(室外機)(冷房時のコンデンサーがこの役割になる)
- 外気から熱を吸収する。
- 膨張弁(またはキャピラリーチューブ)
- 冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の液体にする。
- コンデンサー(室内機)(冷房時のエバポレーターがこの役割になる)
- 高温・高圧の冷媒が室内 の空気を暖める。
- 送風ファン(室内機・室外機)
- 室内機は暖かい空気を部屋に送り込む。
- 室外機は冷媒の気化を促す。
暖房の流れ
- エバポレーター(室外機):低温・低圧の液体冷媒が外気の熱を吸収し、気化する。
- コンプレッサー(室外機):気化した冷媒を圧縮し、高温・高圧の気体にする。
- コンデンサー(室内機):高温・高圧の冷媒が室内の空気を暖め、液体になる。
- 膨張弁(またはキャピラリーチューブ):液体冷媒の圧力を下げ、再び低温・低圧の状態にする。
- エバポレーター(室外機)に戻る → このサイクルを繰り返す
→ 外の熱を室内に取り込むことで、暖かい空気を作るのが暖房の仕組み
冷房と暖房の違いのまとめ
| 項目 | 冷房 | 暖房 |
|---|---|---|
| 熱の移動方向 | 室内の熱を外へ逃がす | 外の熱を室内へ取り込む |
| 室内機の役割 | エバポレーター(冷やす) | コンデンサー(暖める) |
| 室外機の役割 | コンデンサー(熱を放出) | エバポレーター(熱を吸収) |
| 切り替え機構 | - | 4方弁(リバーシングバルブ)で冷媒の流れを逆転 |
補足:暖房時に外が寒すぎるとどうなる?
外気温が極端に低くなる(-10℃以下など)と、以下の問題が発生します。
-
冷媒が十分に気化できない(液バック現象)
- 外が寒すぎると冷媒が外の熱を吸収しにくく、液体のままコンプレッサーに戻る可能性がある。
- コンプレッサーは気体を圧縮する設計なので、液体が入ると故障の原因になる。
-
霜がつく(霜取り運転が必要)
- 外気温が低いと室外機のエバポレーターに霜がつき、熱交換効率が低下する。
- 定期的にデフロスト(霜取り運転)を行い、霜を溶かす。
対策
- 寒冷地用エアコン(特別な冷媒や高効率コンプレッサーを使用)
- 補助ヒーター(霜取りや暖房効果を補助)
- デフロスト運転(自動的に霜を取り除く)
結論
- 冷房と暖房は基本的に**同じ部品(コンプレッサー・コンデンサー・エバポレーター・膨張弁)**を使うが、冷媒の流れが逆になることで役割が変わる。
- **4方弁(リバーシングバルブ)**によって冷房⇔暖房の切り替えを行う。
- 外が寒すぎると暖房の効率が下がるため、寒冷地では専用の対策が必要。
エアコンはこの仕組みで、効率よく室内の温度を調整している
冷蔵庫
冷蔵庫の仕組み
冷蔵庫は、熱を庫内から外部へ移動させることで、庫内を冷却する装置です。冷却は、冷媒(フロンなどのガス)を循環させることによって実現します。冷媒は、圧縮、冷却、膨張、蒸発という4つの過程を経て熱を移動させます。
冷蔵庫の4つの主な過程
冷蔵庫内で冷媒が通る過程を、次の4つのステップで説明します。
1. 圧縮(コンプレッサー)
- 冷媒ガスを圧縮することにより、冷媒の温度と圧力が上がります。
- この過程は断熱圧縮です。冷媒は熱を外部に放出せず、圧縮されることでその温度が急激に上昇します。
- 冷媒は、冷蔵庫外部のコンデンサーに送られ、外に熱を放出する準備をします。
2. 放熱(コンデンサー=室外機)
- 圧縮されて高温・高圧になった冷媒は、コンデンサー(室外機)で冷やされます。
- ここでは、冷媒の圧力を変えずに温度を下げる**等圧冷却(凝縮)**が行われます。
- 冷媒は冷却されることによって気体から液体に凝縮し、その過程で熱を放出します。この熱は室外機を通じて外に放出され、冷媒は液体状態になります。
3. 膨張(膨張弁)
- 凝縮した液体冷媒は、膨張弁を通って急激に圧力を下げられます。
- 圧力が下がると、冷媒の温度も急激に下がり、冷媒は非常に低温の液体になります。ここでは断熱膨張が起こり、冷媒の温度が下がります。
4. 吸熱(エバポレーター=庫内)
- 膨張した冷媒は、冷蔵庫内のエバポレーター(庫内機)で蒸発しながら熱を吸収します。
- 冷媒が液体から気体に変わるとき、冷蔵庫内の熱を吸収します。この過程で、庫内の温度が下がります。
- 冷媒は庫内で熱を吸収した後、再び気体として圧縮機に戻り、再度圧縮されるサイクルが始まります。
冷蔵庫の全体的な流れ
- **圧縮(コンプレッサー)**で冷媒を圧縮し、温度を上げる。
- **放熱(コンデンサー)**で冷媒の温度を下げ、液体に戻す。放出した熱は外に逃がす。
- **膨張(膨張弁)**で圧力を下げ、冷媒を低温にする。
- **吸熱(エバポレーター)**で庫内の熱を吸収し、庫内を冷やす。
冷蔵庫が冷える仕組みのポイント
- **熱は自然に「高温から低温へ流れる」**ため、冷蔵庫はこの熱の流れを逆転させるために、冷媒を利用して強制的に熱を移動させています。
- 圧縮によって冷媒の温度を上げ、高温・高圧の冷媒を放熱させることで外部へ熱を逃がし、冷媒が低温・低圧の状態になるときに庫内の熱を吸収します。
- このサイクルが繰り返されることで、冷蔵庫内が冷却され、庫内の食品が保存できるようになるのです。
熱を外に出すための「圧力変化」と「熱の流れ」
冷媒の状態変化を整理すると、次の4つの過程があるよ。
| 過程 | 変化の種類 | 温度 | 圧力 | 熱のやりとり |
|---|---|---|---|---|
| ① 圧縮(コンプレッサー) | 断熱圧縮 | 上がる🔥 | 上がる📈 | 外部と熱のやりとりなし |
| ② 放熱(コンデンサー=室外機) | 等圧冷却(凝縮) | 下がる🌡 | 高いまま📈 | 外へ熱を放出🔥 |
| ③ 膨張(膨張弁・キャピラリーチューブ) | 断熱膨張 | 下がる❄ | 下がる📉 | 外部と熱のやりとりなし |
| ④ 吸熱(エバポレーター=庫内) | 等圧加熱(蒸発) | 上がる🌡 | 低いまま📉 | 庫内の熱を吸収❄ |
圧力変化と断熱変化の関係
① 圧縮(コンプレッサー)→ 断熱圧縮
- 圧縮すると、気体の分子が狭い空間に押し込められ、エネルギーが増えて温度が上がる。(断熱変化)
- この時、外部に熱は放出していない。
- でも、温度が上がったことで、この後の放熱がスムーズにできるようになる。
② 放熱(コンデンサー)→ 等圧冷却
- 室温より高温になった冷媒(高圧ガス)が、室外機で空気に熱を渡して冷やされる。
- 圧力は変 えずに、温度を下げる「等圧冷却」。
- 冷媒は気体→液体に凝縮しながら、大量の熱を放出する。
- ここが**「熱を外に出す操作」**にあたる。
③ 膨張(膨張弁)→ 断熱膨張
- 高圧・高温の液体冷媒を、膨張弁(キャピラリーチューブ)を通して急激に圧力を下げる。
- 圧力が下がると、冷媒が膨張して温度が一気に下がる。(断熱変化)
- ここでは外部と熱のやりとりはなく、単純に圧力が下がることで冷媒の温度が低くなる。
④ 吸熱(エバポレーター)→ 等圧加熱
- 圧力が下がった冷媒は低温・低圧になっているので、庫内の熱を吸収しやすい。
- 庫内の熱を吸収しながら液体から気体へ変化(蒸発)する。
- ここで庫内の温度が下がる。
- 圧力は低いままなので「等圧加熱」の状態。